「外注よりも社内デザイナーを雇用したほうが、コスパがいいのでは?」
「SNSやホームページ、チラシも増えてきたし、外注だけだとコストがかかりすぎる…」
「かといって社員だけで回すのも、そろそろ限界かも…」
そんなタイミングで出てくるのが「インハウスデザイナー」という選択肢だと思います。
この記事では、インハウスデザイナーの業務範囲と、中小企業が採用前に知っておきたいメリット・デメリット・コストについて、解説していきます。
実際に、事業会社でインハウスデザイナー(兼ひとり企画広報担当)として働いていた経験も踏まえながら、中小企業が採用前に知っておきたい「リアルな部分」を掘り下げていきます。
インハウスデザイナーの雇用を検討中の中小企業経営者・ご担当者の方にとって、「採用するかどうかを判断するための材料」になれば幸いです。
[ 目次 ]
インハウスデザイナー(企業内デザイナー)とは?
インハウスデザイナーは、広告代理店や制作会社側にいるデザイナー(外注)ではなく、自社の社員として在籍し、自社のためだけにデザインやWebまわりを担当する「企業内デザイナー(専属デザイナー)」のことです。
事業会社に所属し、ホームページやチラシ、営業資料など、自社の販促・広報に関わる制作物を幅広く担当します。
販促にまつわる企画・広報業務も兼任する場合もあります。(私自身がそうでした)
現場感をよく理解しているため、1~10まで細かく説明しなくても汲み取って動いてくれる点は大きな魅力です。
これだけ聞くと、とても心強い存在に思えますが、実際に採用してみると
- 思ったほど活用しきれなかった
- 仕事量に波があり、もて余してしまう月がある
- どこまで任せて良いかわからず、扱いにくい
- 新卒・未経験を採用したものの、成果が出ない
- スキルアップはデザイナー任せ(教育環境がない)
- 他にデザインの善し悪しを判断ができる人がいない
といった悩みも、現場ではよく聞かれます。
インハウスデザイナーの担当範囲は?
まずは、インハウスデザイナーの担当業務についてです。
初めて「インハウスデザイナー」を雇用する場合、多くの経営者の方が最初に気にされるのは「どこまで任せられるのか?」という点だと思います。
一般的には、以下のような業務を担当する事が多いです。
- ホームページ制作・更新・改善
- バナー・LP(ランディングページ)の作成
- 会社案内・チラシ・パンフレットなどの印刷物デザイン
- SNS投稿用の画像・バナー制作
- ロゴ・ブランドの統一感の管理
- 外部の制作会社とのやりとり・調整 など
一言でまとめると、「社内のクリエイティブ周りを横断的に支える役割」を担うことが多いポジションです。
インハウスデザイナー時代のリアルな担当範囲
ここからは、私自身がインハウスデザイナーとして事業会社に所属していたときの実体験ベースのお話です。
元々私は広告代理店の制作部門出身だったため、Webも印刷物も経験があり、マーケティングや広告に関する知識もありました。
そのため、わりと広い範囲で業務を任せてもらっていたと感じています。
私の場合は会社設立時点からの雇用だったため、必要な制作物が非常に多く、ロゴ、看板、ホームページ、名刺…と、立ち上げ期に必要なものを一気に整えていく感じでした。
主に以下のような内容を担当していました。
- ロゴ、看板、名刺、カタログなど全ての印刷物デザイン
- ホームページ制作・更新・運用
- 展示会、ノベルティ、ゆるキャラ、動画など販促全般
- 社内サーバー、OA機器、システム導入など、社内インフラまわり
- その他、業務効率化、資料作成など事務寄りの業務まで
書き出すときりがなく、途中からは、もはや「デザイナー」とは関係のないものまで含まれています。
正直、会社設立からしばらくは作るものが多すぎて、時間に余裕はありませんでした。
その後、ある程度制作が落ち着いてくると、率先して他部署のお手伝いをしていました。
日ごろから他部署とコミュニケーションをとっておくと、何か制作物が必要になったときも協力を得られやすいため、ここも重要ポイントでした。
また、社内のあらゆる情報を知ることができるため、実際の現場に合った、必要なクリエイティブを作りやすくなります。
パソコン関係の事は得意分野なので、他部署で困っていることはないか、日々の業務をもっと効率的にするにはどうすればよいか考えながら、少人数でも無理なく回せるように環境整備にも取り組みました。
「会社の業績を伸ばす」ために、営業部門とも密にかかわっていました。
もっと営業しやすくなるよう、現場の声を聞きながら各種制作物の改善や、日々の営業資料作成なども行っていました。
インハウスデザイナーを雇用するメリット
次に、インハウスデザイナー(企業内デザイナー)を雇用する主なメリットが以下です。
[ 社内事情を理解したうえで動いてもらえる ]
会社の方針・業界の背景・社内の制約条件などを理解したうえでデザインができる点は、大きなメリットです。
外部の制作会社に毎回一から説明する手間を減らせるのは、現場レベルで見てもかなり大きいと感じます。
業務全体の流れを把握しているため、「次は何が必要になりそうか」を社内の事情を踏まえて予測し、ズレの少ない提案ができるようになります。
[ スピード感が出る ]
軽微な修正やバナーの差し替えなど「ちょっとここだけ変えたい」場合にも、頼みやすく、リアルタイムに対応ができます。
日々の「小さな修正」にも素早く対応できるので、営業や広報の動きもスムーズになります。
「外注に頼むほどではないけれど、放置もしたくない細かい改善」が回りやすくなる点は、インハウスならではの強みです。
[ ブランドの統一感を保ちやすい ]
会社パンフレット、ホームページ、SNS、営業資料…と制作物が増えると、見た目(デザイン)がバラバラになりがちです。外注先が分かれている場合は、特にズレていきやすくなります。
インハウスデザイナーはこれらの制作物のトーン&マナーやブランドイメージが崩れないよう、「全体を俯瞰して整える役割」を担います。
インハウスデザイナーを雇用するデメリット
ここは経営者様が特に気にされている部分かと思います。
ここからは、あくまでも「現場でよく起きている傾向」の話です。
すべての企業・インハウスに当てはまるわけではありませんが、採用を検討する前に知っておくと判断しやすくなります。
[ 一人インハウスは「何でも屋さん」になりがち ]
中小企業でありがちなのが「一人インハウスデザイナー」です。
私自身も、社内に一人だけのインハウスデザイナーでした。
「インハウスデザイナー時代のリアルな担当範囲」」でお伝えしたとおり、ホームページ、印刷物、SNS、資料作成など、一人で抱える領域が広くなりがちです。
まさに「何でも屋さん」化していきます。
結果として、
- どの分野でも「80点」で止まりやすい
- 頼まれたものを次々とこなしていく毎日になりがち
- 本来やるべき制作物の効果測定・分析・改善まで手が回らない
といった状態に陥ることもよくあります。
「作る人」はいても、「振り返って改善する人」がいない状態になりやすい、というのが一人インハウスの難しさです。
[ スキルの差が大きく、成長は個人に依存しやすい ]
実は「インハウスデザイナー」といっても、その担当範囲はデザイナーのスキル・経験によって様々です。
例えば、
- Webに関する事は得意だが、印刷物の経験は少ない
- SNSバナー程度なら作れるが、広告運用の経験はない
といったケースも少なくありません。
デザイナーなら何でも制作できるわけではないので、雇用前に「どの領域を任せられる人なのか」を具体的に確認しておくことが重要です。
もし、外注費用の削減を目的とされている場合、対応できない部分は結局外注との併用になるため、思ったほど制作コスト削減につながらないケースもあります。
特に、新卒・未経験の一人インハウスデザイナー の場合、そもそも本人が「自分は何をやればよいのか」を掴めていないことも多く、指示待ち状態になる事もあります。
任せても経験不足によりクオリティが追いつかない、一人で抱える領域が広すぎてミスが多発する、といったリスクもあります。特に印刷物のミスは、刷り直しになり、部数が多い場合は大きな損失にもつながります。
教育できる体制がない場合、新卒1人に全てを託すのはかなりリスクが高いです。
また、新卒・未経験に限った話ではありませんが、一人インハウスデザイナーは環境的にスキルアップが難しいという現実があります。
制作会社であれば、先輩デザイナーからの技術指導やフィードバックがあり、働きながらスキルアップしていけますが、一人インハウスデザイナーの場合はそうはいきません。
スキルアップは個人任せになってしまうため、強い意欲を持って自ら学び続けない限り、成長スピードはどうしても緩やかになります。
[ よく相談として挙がるインハウスデザイナーへの不満 ]
ここからは実際に私が伺ったインハウスデザイナーを雇用した事業会社様からの声です。
- 社内にデザインの良し悪しを判断できる人がおらず、「なんか違う」と感じても、「何が違うのか」を言語化できないため指示が出しにくい
- 仕事量が不明瞭で、どこまで仕事を振って良いのかわからない(扱い方が難しい)
- 制作物がない時は暇そうに見えてしまい、周りの社員から不満が出ている
実は、これらは決してめずらしい話ではありません。
社内でのコミュニケーションが円滑であれば解消できる部分もありますが、誤解が生じやすいポジションでもあります。
インハウスデザイナー本人の能力だけでなく、「社内でどう位置づけるか」「評価や役割をどう設計するか」も同じくらい重要です。
給料だけでなく「総コスト」で考える必要がある
インハウスデザイナー雇用のコストは、当然「月給」だけではありません。
- 社会保険料などを含めた総人件費
- パソコンやソフト(Illustrator・Photoshopなど)の環境整備(※)
- 教育・研修の時間と費用
- 1年未満で退職してしまった場合の採用やり直しコスト
※デザイン業務に適したスペックのパソコン、各種デバイス(スマホ・タブレット)、専用機器、各種デザインソフト、有料フォント、素材購入費など、想像以上に必要な経費が積み上がっていきます。
即戦力となるインハウスデザイナーを採用しようとすると、給与も高額になりがちで、地方の中小企業にとっては 決して小さくない固定費が発生します。
逆に、コストを抑えて新卒・未経験を採用すると、今度は「育成コスト」と「品質の不安」が大きくなります。
この「即戦力を取れば固定費が重くなり、未経験を取れば育成負担が重くなる」というジレンマは、多くの企業が抱えている現実ではないかと思います。
インハウスデザイナー採用と相性が良い会社は?
ここからは、私の経験や周囲の事例を踏まえた「傾向」の話です。
[ インハウスデザイナー採用と相性が良いケース ]
- デザイン・Webまわりの仕事が常に一定量ある
- マーケティングや広報部門があり、デザイナーを活かせる環境がある
- 教育・レビューができる人が社内に1人以上いる
- 「お任せで!」ではなく、役割を明確に定義できる
特に、すでにマーケティングチームや広報チームがある会社は、インハウスデザイナーとの相性が良いことが多いです。
戦略や企画を考える人がいると、デザイナーはアウトプットに集中できるためです。
[ インハウス採用が負担になりやすいケース ]
- 社長や担当者が「デザインの仕事」をイメージできていない
- 制作物の量が安定していない(月によって大きく変動する)
- 中長期での育成を見込める体制がない
- 採用後、「何を任せたらいいかわからない」という状態になりそう
このような場合は、いきなり社員として採用するよりも、外部の力をうまく使いながら様子を見る という選択肢もあります。
ベテランインハウスデザイナーを採用したいけど…
ここまで読んで、「それならベテランを採用すればいいのでは?」と感じた方もいるかもしれません。
これまでの流れでいくと、理想的なのは以下のような人材です。
- Webも印刷物もできる
- 企画やディレクションもできる
- マーケティング知識もある程度ある
- コミュニケーション能力も高い
そんな「オールラウンド型のベテランインハウスデザイナー」が1人いてくれると、とても心強いですよね。
しかしながら現実としては、
- そのレベルの人材はそもそも希少
- フリーランスや個人事業で活動しているケースが多い
- 中小企業の1社専属で働くより、複数社を担当する働き方を選ぶ人も多い
という事情もあり、採用のハードルはかなり高いのが実情です。
採用できたとしても、
- それなりの給与を提示する必要がある
- その人が辞めたときのダメージが大きい
といったリスクも合わせて考える必要があります。
「外部インハウスデザイナー(顧問型)」という選択肢もある
ここからは、少し提案寄りの話になりますが、インハウスデザイナー採用を検討している企業ほど知っておいて損はない選択肢です。
社内にインハウスデザイナーを抱えるのではなく、
「外部のインハウスデザイナー」=顧問として継続的に相談できるパートナー を持つという形もあります。
[ 外部インハウスデザイナーのイメージ ]
- 月◯回のミーティングで、ホームページや集客の相談ができる
- 必要に応じて、制作会社への指示出しや内容チェックも依頼できる
- 社内の状況を理解したうえで、「どこに予算を使うべきか」を一緒に整理してくれる
- 必要に応じて、自社で更新・改善できるように内製化のサポートもしてくれる
インハウスデザイナーを雇用する場合と比べて、
- 固定費の負担を抑えやすい
- 会社の規模や状況に合わせて、契約内容を調整しやすい
- 万が一合わなかった場合でも、雇用のようなリスクがない
という点が、「外部インハウスデザイナー」の強みです。
[ C3 Design. の顧問サービス ]
C3 Design.の「継続支援型 集客顧問サービス」は、ざっくり言うと 「外部インハウスデザイナー+Web担当」のような役割 を担うサービスです。
- ホームページの改善・アクセス解析
- 集客まわりの相談(Web広告・導線改善など)
- 社内で更新していくためのレクチャー・内製化支援
- 制作会社への指示出しや内容チェック
など、会社の状況に合わせて柔軟にサポート内容を組み立てることができます。
将来的に、内製化できる部分を増やしたい企業様には、土壌づくりのサポートとしてもおすすめです。
軌道に乗るまではしっかりサポートさせていただき、ある程度社内で回せるようになってきたら、年に数回のスポット支援に切り替える、もしくは卒業していただく、といった形も可能です。
まとめ:インハウス採用か、外部顧問かを冷静に比べる
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
自身がインハウスデザイナーだった頃の経験も思い出しながら書いていたら、少し長くなってしまいましたが、意思決定のヒントになっていればうれしいです。
結局のところ、インハウスデザイナーが向いている会社もあれば、外部のパートナーに任せた方がうまくいく会社もある、という事になります。
大事なのは、「自社の現状と体制に対して、本当にインハウスデザイナーの採用がフィットするか?」を冷静に見極めることだと思います。
最後にポイントを整理します。
[ インハウスデザイナーのメリット ]
- 社内事情を理解したうえで動いてもらえる
- 修正・更新などのスピード感がUP
- ブランドの統一感を保ちやすい
[ 一方で、起こりがちな現実・リスク ]
- 一人インハウスは「何でも屋さん」になり、疲弊しやすい
- スキルセットの見極め・育成が難しい
- 給料だけでなく、総人件費・教育コスト・採用リスクも発生する
- ベテラン採用は、そもそもハードルが高い
インハウスデザイナーを採用するか、外部に任せるかは、「会社のフェーズ・予算・体制」によって最適解が変わる選択だと考えています。
- まずは外部のインハウス(顧問)で「必要なところだけ」支援してもらう
- 将来的に、制作物の量や体制が整ってきたら、社内採用も検討する
というステップを踏むのも、一つの選択肢です。
顧問サービスに興味がある方へ
インハウスデザイナーの採用か、外部顧問かで迷っている場合は、一度、現在の状況やお考えを整理するところからご一緒することも可能です。
「自社の規模だと、どんな体制が現実的か?」というところから一緒に考えていきましょう。
「インハウス採用と外部顧問、どちらが合いそうか知りたい」
「今の予算感で、どこまでできるのか聞いてみたい」
という段階でも、オンラインでお話を伺ったうえで、必要な支援内容と進め方のイメージをお伝えします。
▼顧問サービスの内容はこちら
▼まずは相談だけしてみたい場合はこちら
